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交通事故被害相談@岐阜

逸失利益における基礎収入

  • 文責:所長 弁護士 古田裕佳
  • 最終更新日:2021年4月5日

1 逸失利益とは

後遺障害に関する損害は、主に後遺障害慰謝料と逸失利益があります。

このうち逸失利益とは、後遺障害によって労働能力が低下したことによる、減収・失業といった不利益や、昇進・転職への影響等、将来的に生じることが予想される損害のことを指します。

2 基礎収入の基本的な考え方

逸失利益は、その人の【基礎収入・労働能力喪失率・労働能力喪失期間】の3点を考慮して算定します。

基礎収入は、逸失利益算定のベースとなる収入額のことです。

原則として事故前の現実収入額を参考にします。

しかし、後述のとおり、被害者の職業や年齢等により、収入額の評価方法は異なってきます。

3 会社員(給与所得者)の場合

会社員(給与所得者)の場合、原則として、事故前の給与額を基礎とします。

具体的には、事故前年度の源泉徴収票記載の総収入を基礎収入とします。

しかし、就職して間もない場合には、将来的には昇給していくと考えられるのに、事故前年度の総収入を当てはめるのは適切ではありません。

そのため、30歳未満の若年である場合で、実際の収入額が賃金センサスを下回る場合には、事案にもよりますが、賃金センサスの金額を基礎収入とすることもあります。

4 自営業者

自営業者(事業所得者)の場合は、原則として、事故前年度の確定申告書を参考に、その申告所得額を基礎収入とします。

青色申告控除がされている場合には、その控除額も所得額に加えます。

自営業者の中には、申告額よりも実際の収入額は大きいという方も少なくないかと思います。

この場合には、実際の収入額を示す資料を用意する必要がありますが、裁判実務では、かなり確実性のある立証を求める傾向にあり、結果的には確定申告書に基づく判断となる事例が多いといえます。

5 会社役員

会社役員の場合は、役員報酬の性質を考える必要があります。

役員報酬に、後遺障害によって労務提供できなくなり、その対価が失われる部分(労務対価部分といいます。)があれば、その部分を逸失利益の基礎収入と考えます。

他方で、後遺障害によっても失われない部分(利益配当的部分といいます。)があれば、その部分については将来的な損害がないのであるから、基礎収入には含みません。

労務提供部分がどの程度の割合あるのかは、会社の規模、その役員の職務内容、役員報酬額、他の役員の職務内容・報酬額などを考慮して判断されるため、事案ごとに慎重に検討する必要があります。

6 主婦

最後に、主婦(家事従事者)の場合は、一般的には、賃金センサスによる女性労働者の全年齢平均賃金を基礎収入とします。

ただし、高齢者である場合や家族構成などによっては、保険会社から、全年齢平均賃金そのままでなく、一定程度減額して基礎収入を考えるべきであると主張してくることがあります。

仮に、事故前に担っていた家事労働の内容や労務の程度が、一般的な世帯と同程度であれば、その旨を説明して、全年齢平均賃金が適用されるべき事案であることを主張していく必要があります。

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